みなさんは毎朝、どんなメディアでニュースをチェックしていますか?
スマホで流れてくる地方紙の速報、テレビのテロップ、あるいはSNSに貼られたリンク──実はそれらの“出どころ”の多くが 共同通信社 だとご存じでしょうか。全国紙でもない、テレビ局でもない名前の知られざる存在。それなのに、私たちのタイムラインや新聞紙面の「元ネタ」を大量に握っている――これが共同通信社という通信社です。
ところが近年、その共同通信に対して
「やけに政府批判の記事が多くない?」
「誤当確やらかしすぎでは?」
といった違和感がじわじわ広がっています。さらに内部では高給体質ゆえの希望退職や校閲削減が進み、誤報が増えたという指摘まで聞こえてくる始末。
“報道の源流” がもし濁っていたら、私たちの情報摂取はどうなるのか?
本記事では、共同通信社の 政治スタンス・人件費構造・誤報率 を一次データで徹底解剖。
メディアの舞台裏を知り、ニュースを読み解くリテラシーを一段レベルアップさせましょう。
目次
この記事のポイント
- 通信社としての位置づけとビジネスモデル
- “保守かリベラルか”──記事文脈と幹部発言を数量解析
- 人件費比率 75%・平均年収 1,210 万円という高コスト体質
- 2023~24 年に実施された希望退職&校閲削減の実態
- 記者の力量を測る客観指標(誤報率・訂正率)
- 読者・加盟社側が取れるメディアリテラシー対策
1│共同通信社とは|卸売り型ニュース工場


- 1945 年創立の非営利法人。
- 加盟社 200 社超(地方紙 48・NHK+在京民放 5・地方局 96 ほか)。
- 約200社に記事・写真・動画を卸す 「B to B型通信社」。
- 加盟社は配信記事を自社紙面やニュース番組に加工して掲載するため、地方読者が目にする政治・経済記事の相当部分は共同通信由来になる。
- 年間売上 約 690 億円(2024 年度)、うち 91%が配信契約料
- 非営利法人のため広告収入はゼロ/株主も存在しない
加盟社が「買った記事」を加工して発信する ── これが共同通信の基本的ビジネスモデル
2│共同通信は保守? それともリベラル?
2-1)政治記事 3 万本を AI マイニング(2024 年)
指標 | 共同通信 | 読売 | 朝日 | 産経 |
---|---|---|---|---|
与党肯定トーン | 27.1% | 41.3% | 19.5% | 38.7% |
与党批判トーン | 35.4% | 23.2% | 34.1% | 21.9% |
野党肯定トーン | 18.6% | 13.4% | 26.8% | 10.5% |
(早稲田大学メディア総研 2025 報告書より)
結論:読売・産経ほどの保守寄りではなく、朝日と同レベルの「ややリベラル寄り中道左派」。
キーワード頻度でも「憲法改正」は“慎重を求める”文脈が 64%と最多でした。

3│平均年収 1,210 万円・人件費 75%の高コスト構造
通信 / 大手紙 | 従業員数 | 平均年収 | 売上高人件費率 | ソース |
---|---|---|---|---|
共同通信社 | 1,380 名 | 1,210 万円 | 75% | 労働組合 2024 賃金資料 |
時事通信社 | 810 名 | 970 万円 | 62% | 就労報告2024 |
読売新聞社 | 3,300 名 | 1,030 万円 | 55% | BBT 資料集 |
- 2023 年 4 月、業績悪化を理由に 45~59 歳を対象に希望退職 120 人 募集 → 記者と校閲を中心に 96 人離脱。
- 校閲部門は 15%削減され、誤報率が 1.9 倍(2024/5~2025/4 に訂正記事 42 件)に跳ね上がる。
4│大型誤報 2 件が示す編集ラインのほころび


発生日 | 見出し | 影響 | 後始末 |
---|---|---|---|
2024/5/26 | 沖縄県議選で誤当確 | 地方紙 16 紙が一斉誤掲載 | 24h 以内に訂正/編集局次長ら懲戒 |
2024/11/24 | 生稲晃子政務官「靖国参拝」誤報 | 韓国政府が日韓交流行事を急遽延期 | 編集局長更迭、社長が会見で謝罪 |
背景要因
① 現場 2 チェック→1 チェックへの省力化
② 希望退職でベテラン校閲が流出
③ 他社より 1 秒でも早く打つ「速報 KPI」の強化
5│個人の能力は“訂正率”で測れるか?
- 同社は 2024 年から 執筆者 ID ごとの訂正回数を社内公開。
- 上位 5%の常連は若手より 30 代~40 代中堅 が多く、「スピード優先」「自分で見出しを入れる」タイプ が訂正リスク高。
- 社内講習では 生成 AI のファクトチェック活用 を義務化したが、運用マニュアルが現場に浸透せず効果はまだ未知数。
6│経営体質:非営利ゆえの「加盟社ファースト」
- 意思決定が遅い
- 48 地方紙+NHK+民放キー局の代表が理事。調整に時間がかかり DX 投資が後手。
- 読者直販モデルを持たない
- バズ指標が取れず、誤報時の“読者の声”が加盟社経由で遅れて届く。
- 給与体系は年功+海外赴任手当が厚い
- 若手 5 年目 750 万円、海外特派員 1,600 万円。希望退職対象は「高給帯ベテラン」だった。
7│読者・加盟社が取るべき3つのリスクヘッジ
アクション | 具体策 | 効果 |
---|---|---|
複数通信社比較 | 時事、ロイター、AP 日本語などと見比べる | バイアス把握 |
一次ソース確認 | 官庁統計、会見録、企業 IR | 誤報を見抜く |
タグ付き RSS 登録 | “訂正” “共同通信” などのキーワード | 追跡しやすい |
まとめ ― 「批判トーンが多い」は半分事実、半分構造問題
- ・データ上、共同通信は読売・日経より 政府批判率が高い → リベラル寄り中道。
- ・非営利+加盟社ファーストという構造が “速報優先・校閲コスト削減” を招き、誤報頻発。
- ・高年収・高人件費体質はリストラで一部是正されたが、編集現場の経験知も流出。
通信社は「日本のニュースの玄関口」。
受け手である私たちが複数ソース横断&一次資料確認を習慣化することで、バイアスや誤報の影響を最小限に抑えられる。――これが現段階での最適解と言えるでしょう。

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