2025年7月20日に投開票された第27回参院選──終わってみれば 最大3.13倍 という過去最大クラスの「一票の格差」が生まれ、早くも弁護士グループが全国 14 高裁に選挙無効訴訟を提起しました。
「人口の多い東京では 1 票が軽く、鳥取・島根では 3 倍以上に重い」
これって本当に公平なの?
そんな疑問を抱くみなさんのために、最新データと判例をもとに 「格差がなぜ拡大したのか」「最高裁は何を問題視しているのか」「これからどう是正するのか」 を分かりやすく整理します。
1. そもそも一票の格差とは?

選挙区ごとの 有権者数 ÷ 定数 を比べたとき、最多区と最少区の比率が 2 倍を超えると「著しい不平等」とみなされやすい──これが最高裁の判例上の目安です。参院選は都道府県単位の選挙区で、人口急減の県と急増の都市圏を同じ 1 議席で扱う設計が根本原因です。
総務省のまとめによりますと、今回の参議院選挙の有権者数は公示前日の2日の時点で、在外投票の登録を済ませた海外の有権者も含め、1億424万5113人で、前回・3年前の選挙よりも、およそ119万3000人減りました。
2. 前回(2022)格差 3.03 倍 → 最高裁は「合憲・だが要改善」

2022 年選挙の最大格差は 3.03 倍。2023 年 10 月の最高裁大法廷は「なお合憲」としつつも “投票価値の平等に照らし改善は喫緊の課題” と国会に宿題を課しました。
「1票の格差」が最大2.06倍だった2024年10月の衆院選についても、2025年3月7日に16件の高裁・高裁支部の判決が出そろい全ての訴訟で「合憲」の判断が下されています。
3. それでも拡大 ─ 2025 年選挙で 3.13 倍に
ところが今回の人口基準日は 2025 年 6 月 1 日。コロナ禍後に都市圏回帰が進んだ結果、福井 vs. 東京 で 3.13 倍。前回より格差が 0.1 ポイント拡大し、訴訟が再燃しています。
NHKの試算によりますと、議員1人当たりの有権者数が最も多いのは東京選挙区の97万477人、最も少ないのは福井選挙区の31万481人でいわゆる「1票の格差」は最大で3.126倍となり、前回の3.032倍から拡大しました。
4. 「合区」は万能薬にならなかった

2016 年導入の 鳥取+島根/徳島+高知の合区 は、確かに格差を一時的に縮めました。しかし人口減少スピードが想定以上で、わずか 9 年で元の木阿弥。さらに 「地元議員ゼロ」問題 が深刻化し、合区解消を求める県議会決議も相次いでいます。
5. 最高裁の判断軸は2本立て

- 投票価値の平等(憲法14条)
- 参院の地域代表機能(国会法43条)
判例は「格差が2倍超→合理的期間内に是正しなければ違憲状態」と示す一方、地域代表性も許容。つまり “人口比例100%” に振り切れないジレンマ があるのです。
世界を見ると投票する権利を義務化する国も存在しています。選挙権が任意となっていることで”人任せ”による一票の格差が拡がっていることも考えなければなりません。
6. 2025 選挙後に浮上する三つの是正シナリオ
シナリオ | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
① 追加合区 | 新たに福井+石川など | 格差即縮小 | 地方の声がさらになくなる恐れ |
② 定数「増減」方式 | 都市部の定数増・地方減 | 人口比例に近づく | 地方勢力の反発大 |
③ ブロック制導入 | 北海道・東北…など 9~11 ブロック | 格差1.5倍以下も可 | 憲法改正級の大改革 |
研究者(日野貴之)のシミュレーションによると、都道府県枠を外さない限り格差2倍未満の維持はほぼ不可能 とされています。【人口動態と参院議員定数|常葉大学教育学部紀要〈報告〉】
7. 私たち有権者にできること
- 選挙区別の格差を知る
- 総務省・選管サイトで有権者数を確認
- 是正法案の国会審議を追う
- 与野党案に「地域代表」「人口比例」どちらを重視するか注目
- パブコメや陳情で意見表明
- 選挙制度関連の政府検討会はパブリックコメントを募集
- 投票率を上げる
- 都市部の低投票率は「格差問題」をより深刻に見せる側面も
まとめ:2025 年選挙は“注意信号”から“赤信号”へ
- 格差 3.13 倍 は、2012 年の違憲判決(2.86 倍)を超える水準
- 最高裁は 2025 年秋~冬にも再び判断を下す見通し
- 抜本改革なしでは 2028 年選挙で 3.3 倍超 になるとの試算も
地方代表か投票価値の平等か――。
この綱引きは、最終的に 「有権者が何を優先するか」 にかかっています。まずは自分の一票がどれだけの重みを持つのか、そしてどんな制度が公平と感じるのか。2025 年選挙を機に、ぜひ考えてみてください。

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