「新聞は中立なの?」という疑問に、ひとことで答えるのはむずかしいです。どの社にも理念や歴史があり、紙面づくりの“色”は少しずつ違います。本記事では、毎日新聞の公式の理念と歴史、学術研究で指摘されている傾向をお伝えします。
1. 公式に掲げる理念と歴史をまず押さえる
毎日新聞は1872年(明治5年)創刊の東京日日新聞を前身とし、2022年に創刊150年を迎えています。日本の現存日刊紙のなかで最も長い歴史を持つと自ら位置づけています。
理念は「毎日憲章」に明記されています。たとえば
- 言論の自由独立の確保、真実・敏速な報道と公正な世論の喚起
- 自由・人権・労働の尊重、民主主義に則した文化国家の建設、世界平和への寄与
などです(1946年制定)。 - 理念文言からも、人権や民主主義に軸足を置く姿勢がうかがえます。

年表(ごく簡単に)
年 | トピック |
---|---|
1872 | 東京日日新聞創刊(のちの毎日新聞の前身) |
1911 | 大阪毎日新聞と東京日日新聞が合併、全国紙へ |
2022 | 創刊150年を公式に掲出 |
2. 研究で示された「相対的な立ち位置」


新聞の論調を社説や記事の言語特徴から比較した研究はいくつかあります。代表的なものでは、社説分析に基づき朝日・毎日を相対的にリベラル系、読売・産経(日経を含む文献も)を保守系と位置づける区分が示されています※。
※出典例:渡辺(2021)は、従来研究(畑中ほか2009、徳山2014 など)を踏まえ「読売・産経・日経」対「朝日・毎日・東京」という構図が指摘されてきたと整理しています。個々の記事すべてが当てはまるわけではありませんが、長期の傾向として把握するのが妥当です。
ざっくり比較(研究での相対的位置づけ)
紙名 | 研究での相対的位置づけ(要約) | 根拠例 |
---|---|---|
毎日 | リベラル系に位置づけられることが多い | 社説比較のレビュー |
朝日 | リベラル系 | 同上 |
読売 | 保守系 | 同上+社説表現の変化研究 |
産経 | 保守色が強い | 「主張」路線の明確化など |
日経 | 経済重視で中道〜保守寄りと位置づける文献あり | 同上(レビュー中の分類) |
**“相対的”**という言い方が大事です。各紙とも社会課題では角度を変えて光を当てますし、テーマ次第で立ち位置が交差することもあります。
3. 紙面の“色”を読む—実例からのヒント
- 理念とのつながりを探す
人権・民主主義・平和など、毎日憲章の語彙がどのテーマで立ち現れるかを意識して読むと、紙面の狙いが見えやすくなります。 - 意見欄の使い方を知る
毎日には、識者の論考を集める**「論点」や、立場の違う見解を並べる企画があります。賛否を並べて読むことで、同じニュースの多角的な地図**が作れます。 - 国際面での“広がり”
主要国だけでなくアジア・アフリカの課題にも定期的に光を当てるのが特徴的だと指摘されることがあります。国・地域の当事者の声がどの程度入っているかにも注目すると、記事の厚みが見えます。
4. 他メディアと比べるときの注意点
- 記事の“種類”をそろえる
速報と解説、社説とニュース、配信と紙面。異なる種別を比べると誤読のもとです。 - 同じ日付・同じ出来事で見る
事件・法案・国際会議など、同一事案に絞って並べると、角度の違いがわかりやすいです。 - 見出しだけで判断しない
本文の第1〜2段落に、記者が伝えたい核情報が集まります。見出しは入口にすぎません。
5. 学びを深めるための「読み手のワザ」
- 一次資料リンクを追う
統計や閣議決定、裁判文の一次資料が示されていれば、元文書に目を通す習慣をつけます。 - 反対意見をあえて読む
自分と違う立場の社説を読み、論点のズレをメモします。 - データで裏を取る
世論やメディア接触の動向は、博報堂DYのメディア定点調査などの継続調査も参考になります。 - データベースを使う
毎日新聞の長期記事は毎索。大学・公共図書館で利用可能です。
6. 各新聞社の比較表
観点 | 毎日 | 朝日 | 読売 | 産経 | 日経 |
---|---|---|---|---|---|
研究に基づく相対的位置づけ | リベラル系に位置づけられることが多い | リベラル系 | 保守系 | 保守色が強い | 経済重視、文献によっては中道〜保守寄り |
理念キーワード(各社の綱領・社是など) | 真実・公正、人権、民主主義、平和(毎日憲章) | (各社綱領) | (各社綱領) | (各社綱領) | 経済の発展と中正公平(社是) |
確認のしかた | 毎日憲章の文言・社説の論点・論点面を継続観察 | 同左 | 同左 | 同左 | 経済面・社説の政策評価を継続観察 |
おわりに
見出しは“入り口”で、一次資料は“地図”です。
だれが、どんな言葉で、どの順番に伝えたか。
その小さな違いを自分の目で比べる人が、この情報洪水を泳ぎ切ります。
「中立かどうか」を探すより、どう読めば強くなるかを今日から試してみませんか。
数字に振り回されず、数字で確かめる——その姿勢こそ、あなたの判断を自由にします。

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